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2011.05.12
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カテゴリ:カテゴリ未分類
面接シーズンですね。出版社の面接に臨む学生さんもいらっしゃることでしょう。

どんなに優秀な学生でも、これを出版社の面接で言うと絶対に落とされる、というNGワードがあります。
何だと思います?

「小説家になりたい」というひとことです。

元編集者の小説家、あるいは現役編集者の作家は実在します。そして編集経験がある作家は、売る方法論がわかっているから売れます。ベストセラー作家も多いです。

でも、「小説家になりたい」というひとことを面接で言うと落とされます。

理由は、ビジネスの常識で考えるとわかります。
作家になるためのコネ作りと小説の勉強のために編集者になって、「僕、新人賞取ったから会社を辞めます」という学生なんて、会社は欲しくありません。

編集者というのは職人です。職人は、一人前になるまで時間がかかります。私の担当者は全員が30代と40代です。
新卒で即戦力になれるわけではなく、修行期間がいるのですが、その期間は会社が投資している時期。投資だけして逃げられては会社にすればたまったものではない。

作家になりたい編集者って、自分の好きな本を作りたがるから、自分の好きな本=売れ筋のときは強いけど、流行が変わってしまうと、ついていくことができません。
売れ筋を外す作家は切ればいいけど、正社員はそうそう簡単には切れません。

会社というものは、どこに配属させられるかはわからない。純文学作家になりたくて、純文学の編集をしたかったのに、ポルノに配属されたりもします。そうなると、作家になりたい編集者って、「純文学かぶれのポルノ小説」といった、とんちんかんな本をつくってしまうのですね。

出版社は会社です。会社は営利追求団体です。会社が社員に期待することは、会社に利益を与えてくれること。出版社は編集者に「自分の好きな本」ではなく、「売れる本」を作って欲しいと思っている。

面接で作家になりたいんですという学生は、会社に利益を与えないばかりか、自分の利益の追求のために会社を利用しようとしていると判断されるのです。

そして、作家にとっても、「実は僕、小説家になりたかったんだよね」という編集者ほどやっかいなものはない。
作家も読者さんも流行も社会情勢も見ようともせず、偏った古くさい小説観を振りかざし、「ぼくのかんがえたすごいらいとのべる」「ぼくの大好きな××××(タイトル名です)」を書かそうとして、自分の担当する作家にゴリ押しをするのです。

だったら、作家になりたかったけど、作家になることをあきらめて、編集者になってすばらしい仕事をしている人たちはどうなのでしょうか?
(G舎のK社長は、私は小説家になりたかったけど才能がなかったから編集者になったのだとテレビでおっしゃっていましたね)
あるいは、会社にいるときは編集者に徹してハードな仕事をきっちりこなし、オフタイムに小説を書いている、もしくはきっぱり会社をやめて作家に転身した元編集者作家はどうなのでしょうか?

そういう人たちは、作家になりたい(プライベートな)自分と、編集者としての(オフィシャルな)自分をきっちり分けられる人です。
そして、分けられる編集者は、きちんとした仕事をする、すばらしい編集者です。

私的な自分と、公的な自分を分けられる人は、面接という公的な場で「作家になりたい」なんて、口が避けても言わないのです。





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Last updated  2011.05.12 08:00:02



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