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テーマ:515の放浪(100)
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雪中の赤いシミを足で蹴散らしてみた。
雪の下からビニールの袋のようなものが出てきた。その袋の端をつまんでひっぱりあげて見ると、中になにやら赤い物が入っている。 「キムチか」 ビニール袋に入ったキムチが、車の下敷きになって、赤い汁が雪を染めていたんだ。 「これ、おじいさんのキムチ?」 キムチの袋を高々と持ち上げて、確認してみると 「おお、これが大事なんだよ。よかった。よかった」 キムチをオレから取り上げたおじいさんは、酒臭かった。 キムチをつまみに酒を飲んでたのか。これはうまいから少しもらって帰るかなと、ほろ酔いで帰宅途中にひっくり返ったというところか。車はベコベコでも、キムチが無事だったので・・しあわせか・・ カズヒトと自分たちの車に戻る途中 「このあたりの人って、軽自動車1台より、キムチ1袋の方が大事なんだな」 「そんなわけないだろう」と自分の価値観から離れない。 車で待っていたカズヒトの彼女が 「おつかれさまぁ」と迎える中 「キムチ食いてぇな」と言ってみると、思いっきり後ろを振り返って 「キムチ??」 「うん。キムチ」 白い雪に赤いキムチが、ただの日帰りスキーを、ちょっとだけ思い出に換えてくれた。 (おわり) 第16話全編 は[楽天グログ・・FREE PAGE]に掲載します
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最終更新日
2013.10.24 20:52:13
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