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昭和四十七年四月ぼくの大学生活は本格的となった。
語学のクラスでの落合博満君の真剣な授業を受ける態度にぼくは心を打たれた。英語を必死で訳そうとするあの姿が四十年の月日が過ぎても昨日の事にように目に浮かぶ。 テキストは、 「ラフカディオ・ハーン短編集」 である。 ラフカディオ・ハーンとはあの小泉八雲の事である。だが内容は怪談ではなく、 「フランスの文豪モーッパサンの短編をラフカディオ・ハーンが英語に訳した短編集なのだ」 ぼくはこのテキストを見た時、 「さすが文学を売りにする東洋大学だ」 と思ったが、 「経済学部の学生にこんな本格的な文学作品のテキストを与えるのか」 と思ったのも偽らざる事実である。 「教師が学生番号96番の落合君やってごらんなさい」 女性教師が落合君を指名した。 彼は何度も詰まりながら脂汗を書いて最後まで訳したのだ。終わった時にはみんな万来の拍手をしていた。 「すごい男だ」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012.04.25 08:22:53
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